シルバーさんを断ってヒバを剪定する
仲良しのおじさんを断って
いつか見てしまったから
どこかの名刹
ヒバは風に揺れていた
ひょうきんな丸坊主ではなく
優雅なレースがひらひらと
浮いたお金でちょっと高めの脚立を買う
高さもお値段も
「4段以上上るな
天板に立つな
つま先立つなどもってのほか!」
マニュアルがさんざん脅してくる
落ちたら不名誉もついて来る
世間は冷たかろう
けちだ、冷や水だ、自業自得だ、高齢者のくせに!
ローカル紙に載りでもしたら…
「老女」が死語になっていて幸いだ
恐る恐るはさみを握る
まずは枯れ枝を切ろう
一枝、また、一枝
次は汚い屑団子をこそげ
絡みに絡んだ葉っぱを広げる
一枚、また、一枚
チクチク反撃して来るが
いつしかしゃべり始めている
君は何?
そっぽを向いているけど
ああ、あっちの日差しを受けようってわけ
そこの日陰のひょろひょろの君
「切らないで」って言っている?
いつかの出番を待っているから
思いはとっくに足場を忘れる
まばゆい空
清しい香り
悠久の時が笑い出す
「気がつかないのか?
同じ母より生まれた者に
太古の昔に別れ
別々の道を辿った兄弟に
人体図は冬枯れの木立に
血流は葉脈に酷似する
理由があるとは思わないのか
彼らの無言の優しさにも」
飽くほど長い進化の道のり
弟が訥々と
空気の震えのみを頼んでいた時
兄たちはとっくに築いていたのだ
地下に驚異のネットワークを
電気信号を駆使するための
火を手にした弟は徒に大地を焦がし
水に繋がる兄たちは黙々とそれを癒やして来た
今や追いつけないほどに
兄たちが滅びる時
弟に生き延びる術はないのだが
火星に希望を見る人々もいる
だが、そこに、ひらひら、揺れるだろうか
緑の優雅なヒバのレースが
おっとと、はさみが落ちて行く…
日は傾いた
だが、空はまだ十分明るく
疲労は真に心地よい
ソーラーパネルの掃除も済んだ
さあ、兄たちよ
日差しにさ緑の帆を立てよ!
Yumi

Illustrated by Hikaru 🐰
緑のレース
2025.12

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