老いるのは初めてだ
いろいろと興味深い
確かに不都合なことが多い
足腰は弱る
検診結果が気になる
鏡を見ればうんざりする
かつてすごく美しかった…わけではないが
いずれ、松坂慶子だってソフィア・ローレンだってああなるのだから
私がこうなってもおかしくはない
妙になぐさまる
老いてうれしいこと?
言葉がカミソリのような時代があった
心が目に見えるものなら血だるまだった
流行歌、演歌が辛かった
エモーショナルな言葉がピシピシ刺さる
雑多な言葉の氾濫
満員電車は拷問だった
人は目を閉じられるのに
なぜ耳は閉じられないのだろう…
幸い老いは人を鈍くする
メディアから何が流れて来ようと
だんだん平気になって行く
流行歌、演歌に耳が開く
懐メロにほほえむ
ふと、口ずさんでいたりもして
スルーしてしまった青春時代
いい歌がたくさんあったのだ
とはいえ
今もバッハが流れてくるとほっとする
しばし「言葉」から解放されて
この世には言葉に勝る無言がある…
娘は私に死ぬなと言う
仕方がないので死なない約束をした
彼女は時計の針の刻みが老いをー
死を運んでくると思っている
日々どこからか黒い包みが届いて
老いは身体機能が一つ一つ劣化すること
ついに使い物にならなくなるまで
車検を繰り返した車みたいに
全てがガラクタになった時
死は救いじゃなくて何だろう?
だが、約束は約束
何とか死なないでおこう
ゾンビは汚いからいやだ
できれば美しきバンパイアになって
華麗に星空を飛び回りたい
Yumi

Illustrated by Hikaru 🐰
星空のバンパイア
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