ひろこちゃんにあいたい

友情

どなたか、ひろこちゃんを知りませんか?

私の生家は山の上にあった

周囲には森と草原とたくさんの子供たち

毎朝ふもとの学校まで坂道を駆け下り

学校が終われば山猿になって

木に登り、崖を渡り、沼にはまり

日暮れまで遊んだ

西の地平に真っ赤な夕日を見送るまで

都会からひろこちゃんがやって来たのは小2の時

ぱっちり大きな目とさらさらの髪

標準語

気立てがよくて、かしこくて

いつもやさしくほほえんでいる

大好きになった

ペったりくっついて遊んだ

ひろこちゃんの家には白いレースのピアノがあって

きちんと身仕舞いをしたマミがいた

マミは笑わなかった…

ある放課後

ひろこちゃんがもじもじと言った、

「マミがあなたとあそんじゃだめだって」

何かが胸に突き刺さる

後ろも見ずに家まで駆けて、わんわん、泣いた

わたしの何が悪いんだろう…

その時からずっと考えた、成人してからもずっと

マミに会って問い正したかった、

「私のどこが悪かったのですか? 土で汚れた顔や服? それとも、地元言葉? 方言は汚いですか?」

自分の子供たちにはきつく命じる

決して友達を差別してはならないと

老いにさしかかり

何かのはずみで思い出した

あれは小5の時

私は洗い場でばったりひろこちゃんに会っている!

「ああ、ひろこちゃん、ひさしぶり!」

素直にうれしくて声をかけたのに

彼女の顔は奇妙にゆがみ

だまってバケツを運んで消えた

気になって彼女のクラスを訪ねた時には

彼女は転校した後だった

そういえば私には記憶がない

マミの伝言から洗い場の再会まで

およそ3年間の彼女の記憶がすっぽりと

少なくともクラス替えまでは同じ教室にいたはずなのに…

いったい、何が起こっていたのだろう?

多分…

私は自分の中から彼女を削除していた

痛みに耐えられず

自身を守るために

だが、彼女の方はどうだっただろう

いきなり存在を消されてしまった8歳の女の子の気持ちは

自身の痛みに気を取られ

私は彼女の痛みに少しも気づかなかったのだ

愚かにも長年ねちねちとマミを恨んで

もう、マミなんかどうでもいい!

ひろこちゃんに会ってあやまりたい

「あの時はごめんなさい」と

ずいぶん歳月が過ぎてしまったが…。

もし、どなたかひろこちゃんの行方をご存じなら

どうぞ伝えてください

私がとても会いたがっていると

心から「ごめんなさい」を言うために 

Yumi

Illustrated by Hikru 🐰

なかよし

コメント

  1. […] なったおはなしhttps://bluepaint.blog/2025/08/11/%e3%81%b2%e3%82%8d%e3%81%93%e3%81%a1%e3%82%83%e3%82%93%e3%81%ab%e3… […]

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