私の川
北上川
朝霧を切り裂くヨシキリの声
山の端に光が差して
てらてらと輝く川面
ガタゴト急ぐ一番列車
歯切れのよい号令は
ボート部の朝練
V字型に波紋を広げて
一揃いのオールが滑っていく
岸辺にタプタプと小波を送りながら
揺れるあし原
水の匂い
風…
やがて庁舎の拡声器から
調子っぱずれの音楽が流れて
町の朝が動き出す
窓の下では庭仕事の母が
今は口をつぐんでしまった父の家
古い白壁の
だが、川辺に立てば
柔らかにほどけ来る遠い日々
悠久がその底に
ひっそり懐いていた玉石から
私も小石になり
川床に身を横たえて眠れたら
傷んだ心のささくれを水が優しく削り
すっかり滑らかにするまで
私の川
ふるさとの
北上川で
Yumi

Illustrated by Hikaru 🐰
北上川
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